骨粗鬆症患者における骨吸収抑制療法と歯科インプラント:系統的レビューと顎骨壊死タスクフォースのコンセンサス声明
骨粗鬆症患者に対する骨吸収抑制療法が歯科インプラント治療における薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)のリスク増加やインプラントの生着に影響を与える可能性が指摘されています。McMaster UniversityのDalal S Ali、Aliya A Khanをはじめとした国際顎骨壊死タスクフォースは文献の系統的レビューを実施し、骨粗鬆症治療を受けている患者へのインプラント埋入に関する評価を行いました。
主な結果と推奨事項
現在のエビデンスでは、骨粗鬆症患者における骨吸収抑制療法と歯科インプラント失敗との関連は示唆されていません。 ビスホスホネート製剤またはデノスマブの併用下でも、インプラントの失敗・障害リスクを増加させるエビデンスはなく、インプラント治療は安全にできると考えられます。メタアナリシスによると、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者におけるインプラント失敗の相対リスクは0.82(95% CI: 0.52-1.28)であり、統計的に有意な差は見られませんでした。
これらの結果から、骨粗鬆症で骨吸収抑制療法を受けている患者において、歯科インプラント治療前に骨吸収抑制療法を中断する必要はないとタスクフォースは提言しています(弱い推奨、非常に質の低いエビデンス)。
ビスホスホネート製剤やデノスマブの中止がインプラントの生着を改善したり、MRONJの発生を減少させたりするというエビデンスはありません。特にデノスマブの中止は、骨量のリバウンド減少や多発性椎体骨折のリスク増加と関連しているため推奨されません。
MRONJのリスクについては、長期的なビスホスホネート製剤の使用は、リスクをわずかに増加させる可能性があります(患者1000人あたり3例、調整ハザード比:4.09)。MRONJのリスク因子としては、糖尿病、関節リウマチ、悪性腫瘍、消化性潰瘍、喫煙、口腔衛生不良、感染、炎症性歯科疾患、コルチコステロイドやプロトンポンプ阻害薬の使用などが挙げられます。
結論
現時点では、骨粗鬆症患者に対する骨吸収抑制療法が歯科インプラントの失敗リスクを大幅に増加させるという明確なエビデンスはありません。治療の中断は一般的に推奨されず、個々の患者のリスクとベネフィットを考慮した個別化された管理が重要と考えられます。
