神経痛治療薬ガバペンチノイド、自己傷害リスクとの複雑な関係とは?
プレガバリンやガバペンチンを含むガバペンチノイドは、わが国においても神経障害性疼痛や線維筋痛症などの治療薬として広く用いられていますが、世界的にも消費が急増している薬剤です。2008年に米国食品医薬品局(FDA)は、様々な種類の抗てんかん薬を用いた過去の臨床試験に基づいて、ガバペンチノイドを含む抗てんかん薬を服用した患者において自殺念慮のリスクが上昇したことを示す報告書を発表しましたが、近年の観察研究では、ガバペンチノイドと自傷行為のリスクとの関連性について、相反する結果が示されています。
この論文は英国の医療データベースを用いて、ガバペンチノイドの使用と自己傷害のリスクに関する研究を行ったものです。2000年から2020年までの間にガバペンチノイドを処方された成人10,002人を対象に、自己対照ケースシリーズ研究self-controlled case series analysisを実施し、ガバペンチノイド治療の開始前90日間、治療期間中、治療終了後14日間、および参照期間中の自己傷害発生率を比較しました。
その結果、自己傷害のリスクは治療開始前90日間に増加し、治療期間中に減少、治療終了後14日間に再び増加することが明らかになりました。この結果は、ガバペンチノイドと自己傷害リスクとの関係が単純ではなく、ガバペンチノイドが直接的な原因ではない可能性を示唆しています。医療従事者は、ガバペンチノイド治療中のみならず、治療開始前や治療終了後にも、慎重に患者を観察する必要があります。

論文情報
Yuen A S C, Chen B, Chan A Y L, Hayes J F, Osborn D P J, Besag F M C et al.
Use of gabapentinoid treatment and the risk of self-harm: population based self-controlled case series study
BMJ 2025; 389 :e081627 doi:10.1136/bmj-2024-081627