膝の炎症にメトトレキサートは効く？変形性膝関節症に対する新たな臨床試験結果

変形性膝関節症（KOA）に対する根治的薬剤療法というのは存在しないのですが、KOAの中でも炎症の要素が強いものについては、関節リウマチに近い特徴を有する可能性があります。ということで、この論文では炎症性KOAに対する低用量メトトレキサートの効果を多施設共同、プラセボ対照、無作為化臨床試験で検討しています。

この中では炎症性KOAをMRI上関節液が貯留して滑膜炎が存在するKOAと定義して、膝OAと滑液滲出を伴う患者に対するメトトレキサートの症状緩和および疾患修飾効果を調査すること。

中国の11施設で、2019年7月18日から2023年1月15日にかけて実施。MRIで滑液滲出が確認された炎症性KOA患者を対象とし、患者をメトトレキサート群（最大15mg/週）またはプラセボ群に1:1で無作為に割り付けしました。主要評価項目は、52週間の膝の疼痛VASの変化と、滲出性滑膜炎の最大面積（effusion-synovitis maximal area）の変化としています。

結果:
278名がスクリーニングされ、215名（平均年齢60.4歳、女性89%）が無作為化（メトトレキサート群108名、プラセボ群107名）されました。52週間の疼痛VASおよび滲出性滑膜炎の最大面積の変化は、メトトレキサート群とプラセボ群で有意差なはありませんでした（VAS疼痛の群間差0.3mm、滲出性滑膜炎の群間差0.1cm²）。有害事象は、メトトレキサート群の約32%、プラセボ群の約24%に発生しました。

以上の結果から、 低用量メトトレキサートは、炎症性KOA患者において、52週間で疼痛や滲出性滑膜炎を軽減せず、メトトレキサートの使用を支持しないと結論しています。ただし、重度の膝痛を有する患者のサブグループ分析では、メトトレキサートが症状を改善する可能性も示唆されましたので、今後MTXが有用な症例の層別化が必要と考えられます。

論文情報

Zhu Z, Yu Q, Leng X, et al. Low-Dose Methotrexate for the Treatment of Inflammatory Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. Published online June 02, 2025. doi:10.1001/jamainternmed.2025.1359
http://doi.org/10.1001/jamainternmed.2025.1359