プラセボ鎮痛効果と脳活動の関連|PAG・RVMにおける体部位選択的な疼痛制御

プラセボ鎮痛効果と脳活動の関連|PAG・RVMにおける体部位選択的な疼痛制御

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鎮痛薬の臨床試験が難しいのは少なからずプラセボ効果が存在するからです。この論文では被験者にプラセボの鎮痛クリームを顔、腕、脚のいずれかに塗布し、痛みを誘発する刺激を与えました。機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)を用いて、参加者の脳活動を測定し、鎮痛効果が脳幹の特定の領域の活動とどのように関連しているかを調べました。

その結果、偽薬による鎮痛効果が、中脳水道周囲灰白質(PAG)および吻側延髄腹内側部(RVM)内で体部位局在的に組織化された活動の変化と関連することが明らかになりました。具体的には、顔面への鎮痛はPAGとRVMの吻側(頭側)領域の活動と関連しており、腕と脚への鎮痛は尾側(尾側)領域の活動と関連していました。この組織化は、PAGの反対側で疼痛活動の変化と同じ場所に発生し、鎮痛効果は刺激部位に限定されていました。

これらの結果は、PAGが高度に空間的に局在化した方法で鎮痛応答を調節し、身体部位選択的な疼痛制御を媒介する能力を有することを示唆しています。疼痛と鎮痛の両方がPAG活動の変化を同じ体部位局在的な方法で誘導するという事実は、PAGへの疼痛入力が空間的に適切な行動応答を誘発するだけでなく、空間的に適切な鎮痛応答とも連動していることを示唆しています。

これらの結果は、特定の脳回路を刺激することで、体の特定部位の痛みを緩和できる可能性があります。さらに、慢性的または局所的な疼痛状態の神経基盤を理解するための新たな道が開かれることが期待されます。

プラセボ鎮痛効果と脳活動の関連|PAG・RVMにおける体部位選択的な疼痛制御
プラセボ鎮痛効果と脳活動の関連|PAG・RVMにおける体部位選択的な疼痛制御 (出典: AI生成画像)

論文情報
Lewis S. Crawford et al. ,Somatotopic organization of brainstem analgesic circuitry.Science389,eadu8846(2025).DOI:10.1126/science.adu8846

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