変形性膝関節症における滑液の役割|バイオマーカーと治療標的としての可能性
Nature Reviews Rheumatologyの下記総説では変形性膝関節症(KOA)における滑液(synovial fluid)の役割を解説しています。滑液は関節の潤滑という本来の機能に加え、KOA患者では疾患の進行に寄与する分子メディエーターを豊富に含みます。これらのメディエーターは、局所的な関節組織と全身循環の両方から供給され、KOAの病態を悪化させます。
滑液中に存在するnon-coding RNAs、代謝産物、サイトカイン、その他分泌タンパク質は、KOAの進行、治療効果、痛みの程度を評価するためのバイオマーカーとして機能する可能性があります。
また滑液中の分子メディエーターを標的とする治療法は、KOAの症状を軽減し、疾患の進行を遅らせる可能性があります。現在、これらの分子を標的とする新しい治療法の研究が進んでいます。このように滑液はKOAの病態において重要な役割を果たしており、バイオマーカーと治療標的の両方として有望です。滑液の分子組成をより深く理解することで、KOAに対するより効果的な治療法を開発できる可能性があります。

論文情報
Peters, H., Rockel, J.S., Little, C.B. et al. Synovial fluid as a complex molecular pool contributing to knee osteoarthritis. Nat Rev Rheumatol 21, 447–464 (2025).
https://doi.org/10.1038/s41584-025-01271-4