アメンボの扇状中脚が解明する水上移動メカニズム|自己変形構造とロボット応用
アメンボが水の上をすいすいと移動するのは大変不思議ですが、そのメカニズムには扇のような構造をしている中脚が関係することが報告されています。このような構造形成に関与する遺伝子も発見されており、geishaおよびmother-of-geishaと名付けられています。何でgeisha?とも思いますが、芸者が扇を広げて踊っているイメージがあるからでしょうか?
さて本研究はアメンボの一種であるRhagoveliaの特殊な中脚にある扇状構造が、高速で移動する流れの中で機敏な操作を可能にするメカニズムを解明したものです。この扇状構造は、筋肉の制御なしに、自己変形する現象(エラストキャピラリー現象)を利用しており、水中での展開と水面からの離脱時の折り畳みを迅速に行うそうです。
著者らはRhagoveliaの中脚の扇が、推進時には表面積を大きく保ち、推力による変形に抵抗する一方で、水面に出入りする際には柔軟に折り畳まれるという、機能的な二面性を持つことを示しました。この特性を模倣し、自己変形する人工扇を搭載した昆虫サイズのロボットを開発しました。昆虫とロボットの両方を用いた実験により、自己変形する扇が推力、制動、操縦性を向上させることが確認されました。扇を搭載したロボットの方が搭載していないロボットより遠くまで移動し、よりシャープなターンが可能であることが示されました。また、扇は、ロボットが水から出る際のエネルギー消費を削減しました。
アメンボのようにスイスイ水上を異動する船に乗ってみたいですね!

論文情報
Victor M. Ortega-Jimenez et al.,Ultrafast elastocapillary fans control agile maneuvering in ripple bugs and robots.Science389,811-817(2025).DOI:10.1126/science.adv2792