放射線音響イメージング(RAI)の原理と応用 ― 医療から産業まで広がる可能性

放射線音響イメージング(RAI)の原理と応用 ― 医療から産業まで広がる可能性

ー シェアしよう ー

放射線音響イメージング(RAI)は、近年急速な進展を見せている革新的なイメージング技術です。本review articleは、その原理、応用、そして課題について解説したものです。

RAIはX線、陽子線、電子線、電気Fieldsなどの放射線源を用いて、物質が放射線エネルギーを吸収する際に生じる急速な熱膨張と収縮を利用して超音波を生成し、イメージングを行う技術です。雷が光と同時に音を出すように、放射線(X線や陽子線など)を物体に当てると、ごくわずかな熱が発生し、その熱で超音波が発生します。この超音波をキャッチして画像を作るのが、RAIです。放射線音響イメージングは、熱を発生させるものなら何でも写せるので、レントゲンでは見えにくい組織や、特定の物質の分布を詳しく調べることができます。

技術開発は目覚ましく、3D線量マッピングは理論的概念から臨床試験へと発展しました。検出器の構成は、単一素子から線形アレイ、マトリックスアレイへと進化し、AIによる画像再構成も進んでいます。例えば、がん治療では、放射線がどこにどれだけ当たっているかをリアルタイムで確認することが可能です。医学以外の分野でも非破壊評価(NDE)への応用も模索されており、構造物の内部検査など、幅広い分野での活躍が期待されています。

RAIの実用化には、検出器の高感度化、画像再構成アルゴリズムの改善、高輝度放射線源の開発など、克服すべき課題も存在します。しかしこれらの課題を乗り越えることで、RAIは医療、産業、そして研究分野に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

放射線音響イメージング(RAI)の原理と応用 ― 医療から産業まで広がる可能性
放射線音響イメージング(RAI)の原理と応用 ― 医療から産業まで広がる可能性(出典:AI生成画像)

論文情報
Xu, Y., Xiang, S.L. Radiacoustic imaging. Nat Rev Phys (2025).
https://doi.org/10.1038/s42254-025-00863-z

ー シェアしよう ー

関連記事