診断における公平性とバイアス克服 ― 医学教育とシステム改善の重要性
「ひづめの音を聞いたら、シマウマではなく馬だと思え (When you hear hoofbeats, think of horses not zebras)」という箴言は1940年代にthe University of Maryland School of MedicineのTheodore Woodward教授がインターンに対して用いたもので、診断における初期段階で、可能性の高い疾患を優先的に考慮すべきという教訓を示したものです。しかしもしシマウマという動物を知らなければ、本当にシマウマが原因だったとしても、それに気づかずに誤った診断をしてしまうかもしれません。つまり、知識が不足していると、意図せず偏った見方をしてしまう可能性があるということです。例えば男性患者の場合には骨粗鬆症の可能性をほとんど考えない、というような例が挙げられます。
このreview articleでは、すべての患者は社会的アイデンティティ(人種、性別など)に関わらず、正確で公平な診断を受ける権利があり、診断エラーを減らし、バイアスに対処し、公平な診断プロセスを促進するためには「医学教育」が重要な手段であることを強調しています。また診断の公平性を実現するには、個人レベルのスキルだけでなく、「医療システム全体の改善」が必要であるとともに、診断の公平性は「継続的な学習、反省、改善」を通じて達成されるプロセスであるとしています。
述べられていることはもっともなのですが、診断の公平性を具体的に促進するための介入方法や実践的なステップについては詳細な記述が不足しています。また、医療機関の抵抗、資源の制約、時間的制約といった、診断の公平性推進における潜在的な障壁に対する具体的な解決策や戦略についても、踏み込んだ検討はなされていません。これらの課題を克服し、真に公平な診断プロセスを確立するためには、さらなる研究と実践的な取り組みが求められます。

参考情報
Advancing Diagnostic Excellence through Medical Education in Diagnostic Equity
DOI: 10.1056/NEJMra2411882
