人生100年時代の限界?平均寿命伸びの減速を示す最新研究
2016年に英国の組織論学者Lynda Grattonが著書「LIFE SHIFT – 100年時代の人生戦略」の中で「人生100年時代」を提唱して以来、平均寿命が延伸し、100歳まで生きることが当たり前になるという考え方が定着しつつあります。安倍晋三元首相も「人生100年時代構想会議」議長を務め、超長寿社会に対応するための教育、人材採用、社会保障制度の改革に取り組みました。しかしMax Planck InstituteのJosé Andradeらは、この論文で平均年齢が百歳に達するのは難しい可能性を報告しています。
彼らは高所得国における出生コホートの寿命予測を用いて、寿命の伸びの減速傾向を検証しています。23か国のデータに基づき、複数の確立された死亡率予測モデルを適用した結果、1939年から2000年の間に生まれたコホートにおいて、寿命の伸びが鈍化する兆候が確認されました。
過去のデータでは、コホートあたり平均0.46年の寿命の伸びが見られましたが、予測では37%から52%の減少が示唆されています。この減速は、主に5歳未満の年齢層における死亡率改善の鈍化に起因し、全体のおよそ半分以上を占めています。20歳未満で見ると、3分の2以上を占めます。
この傾向は、分析対象コホートの既存データにも現れており、予測が悲観的過ぎるとしても、減速がすぐに逆転する可能性は低いと結論付けています。この結果は、将来の寿命予測や社会政策に重要な影響を与える可能性があります。

論文情報
Cohort mortality forecasts indicate signs of deceleration in life expectancy gains
José Andrade, Carlo Giovanni Camarda, and Héctor Pifarré i Arolas
Copyright © 2025 the Author(s). Published by PNAS. This open access article is distributed under Creative Commons Attribution License 4.0 (CC BY).
https://doi.org/10.1073/pnas.2519179122