アートセラピーが非感染性疾患(NCDs)の予防と健康促進に果たす役割:システマティック・レビューの示唆

アートセラピーが非感染性疾患(NCDs)の予防と健康促進に果たす役割:システマティック・レビューの示唆

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アートセラピー(芸術療法)というのは絵画、彫刻、音楽、ダンスなどの芸術表現を通じて、心の健康を促進する心理療法で、その効用は広く認識されています。

この論文は芸術活動が非感染性疾患(noncommunicable diseases, NCDs=不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒、大気汚染などにより引き起こされる、がん・糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患・メンタルヘルスをはじめとする慢性疾患)の予防と健康促進に果たす役割に関するシステマティック・レビューの結果を報告しています。世界中でNCDsによる健康格差が拡大する中、芸術が文化的な関連性を生み出し、身体活動や社会的なつながりを促進し、構造的な不平等に対処する可能性に着目したものです。

95の研究が解析対象となりましたが、これらは身体活動不足(n = 22)、不健康な食事(n = 38)、健康の体系的、構造的、社会的要因(n = 114)、精神的健康(n = 33)などに対する芸術プログラムの有効性を検討したものでした。特に、芸術は健康に関するコミュニケーションを促進し、地域社会の結束を強化し、健康行動の変化を促す可能性があることが示唆されました。

分析対象となった研究のデザインや方法論が多岐にわたるため、介入効果の厳密な評価が困難であり、メタアナリシスを実施できなかった点や、介入期間が短い研究が多く、長期的な影響の評価が難しい点などの課題もありますが、本論文は芸術活動が多面的であり、個人の健康増進のみならず、社会全体の健康課題に取り組む上で有効な手段となり得ることを示した点で、重要な意義を持つと考えられます。

アートセラピーが非感染性疾患(NCDs)の予防と健康促進に果たす役割:システマティック・レビューの示唆
アートセラピーが非感染性疾患(NCDs)の予防と健康促進に果たす役割:システマティック・レビューの示唆(出典:AI生成画像)

論文情報
Sonke, J., Tan, M.K.B., Lee, J.B. et al. The arts for disease prevention and health promotion: a systematic review. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-03962-7

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