世界的な少子化の現状と課題|人口減少への適応と持続可能な社会戦略

世界的な少子化の現状と課題|人口減少への適応と持続可能な社会戦略

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少子化は日本の専売特許ではなく、世界的に出生率は低下しており、多くの国で人口維持に必要な水準を下回っています。理由は様々ですが、避妊の普及、教育水準の向上、結婚や出産に対する価値観の変化など、種々の要因が複雑に絡み合って生じていると考えられます。経済成長を前提としてきた社会では、労働人口の減少や高齢者福祉の負担増などが懸念されています。

各国は出生率の回復に向けて、経済的支援や育児支援などの政策を導入しています。例えばドナルド・トランプ米大統領は新生児一人につき1,000ドルの投資ファンドを支給するという財政的インセンティブを提案していますが、他の国における同様な政策の結果を見ると効果は限定的です。より効果的なアプローチとしては、手厚い育児休暇や育児・住宅への補助金などが挙げられます。北欧諸国は、父親の育児休暇を含むこうした投資に早くから取り組んでいます。これらの国では、ヨーロッパの他の地域よりも出生率の低下が緩やかだったものの、それでも依然として減少傾向が続いています。そこで、人口減少を食い止めるのではなく、人口構成の変化に適応していく戦略が重要になります。具体的には、高齢者の労働参加を促進したり、移民を受け入れたりすることが考えられます。とはいえ移民の受け入れについては国民の抵抗が大きいのも現状でしょう。

人口減少は、環境への負荷軽減や一人当たりの投資増加など、プラスの側面も持ちえます。しかし、経済が不安定な場合、財政難から環境対策や社会保障が弱体化する恐れもあります。重要なのは、人口減少を単なる危機として捉えるのではなく、社会システムや価値観を見直し、持続可能な社会を構築していくことです。単に子どもの数を増やすだけでなく、人々の幸福度を高めることを目的とすべきであり、教育や医療への投資、働きがいのある雇用の創出など、社会全体を良くする政策が、結果的に出生率の向上にもつながる可能性があります。この記事では少子化は危機であると同時に、社会を見直す機会でもあるとしています。

世界的な少子化の現状と課題|人口減少への適応と持続可能な社会戦略
世界的な少子化の現状と課題|人口減少への適応と持続可能な社会戦略 (出典: AI生成画像)

論文情報
Nature 644, 594-596 (2025)
doi: https://doi.org/10.1038/d41586-025-02615-6

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