変形性関節症の“鍵遺伝子”700個を特定: 薬の再利用によ る新たな治療の可能性

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変形性関節症(OA)は高齢者に高頻度で発症する疾患であり、高齢化が進むわが国でも大きな問題になっています。有効な治療法が確立されておらず、現在でも末期OA患者に対しては外科的治療が唯一の治療法です。

本論文では最大48万9975例のOA患者と147万2094例の対照群を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)メタ解析の結果を報告しています。

962の独立した関連を発見し、うち513は新規でした。単一細胞マルチオミクスデータを用いて、初期骨格形成経路におけるシグナルエンリッチメントを確認し、トランスクリプトーム、プロテオーム、エピゲノムのデータを統合して、700個のエフェクター遺伝子を特定しました。これらの遺伝子において、まれなコーディングバリアントが共通頻度バリアントよりも効果サイズが大きいことを発見しました。概日時計、グリア細胞関連プロセス、OAで確立された役割を持つ経路(TGFβ、FGF、WNT、BMPなど)を含む8つの生物学的プロセスで、複数のエフェクター遺伝子の関与が集中していることを明らかにしています。

重要な点は、エフェクター遺伝子の10%が承認済み薬剤の標的タンパク質を発現しており、薬剤の転用による治療機会を示唆している点です。本研究は、OAの病態解明と治療標的の発見に貢献するだけでなく、既存薬の再利用という新たな治療戦略の可能性を示唆しています。遺伝情報に基づいて患者を層別化し、薬剤標的となる経路に関わる遺伝子変異を持つ患者を選択することで、臨床試験の成功率を高めることができる可能性があります。

変形性関節症の“鍵遺伝子”700個を特定: 薬の再利用によ る新たな治療の可能性(出典:AI生成画像)

論文情報

Hatzikotoulas, K., Southam, L., Stefansdottir, L. et al. Translational genomics of osteoarthritis in 1,962,069 individuals. Nature 641, 1217–1224 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08771-z

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