動物胎児内で育つヒト臓器細胞:移植医療に向けた新たな一歩

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臓器移植は、臓器機能が失われた患者にとって非常に効果的な治療法として期待されていますが、世界的にドナー不足が深刻な問題となっています。その中で、動物を用いて人に拒絶されない臓器を作成する試みが、遺伝子改変ブタなどで進められています。

通常、キメラ動物の作成には、人の幹細胞をブタやマウスなど異種の胚に導入する手法が用いられますが、この方法には生存するヒト細胞の数が少なく、生存期間も短いという課題があります。

今回the University of Texas MD Anderson Cancer Center in HoustonのXiling Shen氏らは、ヒト細胞を腸、肝臓、脳オルガノイドに成熟させてから妊娠マウスの羊水に注入するという手法で、ヒト細胞が胎児に浸潤し、それぞれのオルガノイドに対応する臓器(腸、肝臓、脳皮質)で増殖することを報告しました。仔マウスの出生1か月後、約10%のマウスの腸にヒト細胞が含まれており、これは腸細胞の約1%を占めていました。生き残ったヒト細胞は機能しているようであり、ヒト肝細胞はヒトアルブミンを生成していました。

この手法は簡便であり、今後生存細胞の割合を増やすことで、より効率的な移植用組織の作成が期待されています。

動物胎児内で育つヒト臓器細胞:移植医療に向けた新たな一歩(出典:AI生成画像)

論文情報

Mice with human cells developed using ‘game-changing’ technique. Author: Smriti Mallapaty. Publication:

Nature Publisher: Springer Nature. Date: Jun 16, 2025

doi: https://doi.org/10.1038/d41586-025-01898-z

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