「歯は感覚器だった?」最古の歯の起源に迫る化石研究の新発見
約4億6000万~5億年前、脊椎動物が最初に骨格を形成した際、外骨格が感覚を妨げる可能性がありました。
この問題を解決するため、初期の脊椎動物は、感覚細胞を含む細い管状構造を持つ歯のような”odontode”を獲得しました。Odontodeは、後に顎に進化した初期の歯の起源と考えられてきました。ところで最も古いodontodeと考えられていた化石生物Anatolepisの起源については、脊椎動物か節足動物(カニなどの甲殻類を含む)かという議論が続いていました。今回、シカゴ大学のHaridyらの研究チームは、高解像度3Dシンクロトロン技術を用いてAnatolepisの微細構造を詳細に分析し、その結果、Anatolepisの歯のような構造は、脊椎動物のodontodeではなく、節足動物の感覚器官に類似していることを明らかにしました。
この発見により、最古の脊椎動物のodontodeは、オルドビス紀に生息していたArandaspisという魚類であることが確定しました。
Arandaspisのodontodeは、象牙質で構成され、エナメル質に覆われています。この研究は、脊椎動物と節足動物が、外骨格を通じて外界を感知するために、それぞれ独自の方法を進化させてきたことを強調しています。そして、現代の歯は、初期の脊椎動物が進化させた感覚構造の遺産であると結論付けています。

論文情報
Haridy, Y., Norris, S.C.P., Fabbri, M. et al. The origin of vertebrate teeth and evolution of sensory exoskeletons. Nature 642, 119–124 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08944-w