「最初のバラは黄色だった」:ゲノムが語るバラの起源と進化
「薔薇(バラ)」と聞くと萩尾望都先生の『ポーの一族』を思い出しますが(古い?)、本研究は観賞用植物として重要なバラ属(Rosa)について、ゲノム解析と表現型解析を組み合わせた包括的な研究を通じてRosaの遺伝的ボトルネックを解消し、多様な野生種を活用するための基盤を構築することを目指したものです。興味深いことに、大規模なゲノム解析の結果、おそらく最初のバラは黄色だったことが示されました。
研究グループは、まず初期に分岐した野生種であるRosa persicaのtelomere-to-telomereの高品質な基準ゲノムを構築しました。このゲノムを基に、大規模なRosaコレクション(215系統)を用いて系統解析と集団ゲノム解析を実施し、従来の形態学的分類を支持する結果が得られました。またRosaの多様性の中心地が中国に存在し、花色に関わるMYB遺伝子や、香りに関わるテルペノイド合成酵素遺伝子などが選択圧を受けていることが示されました。
祖先のバラは黄色い花びらが一列に並び、葉はそれぞれ7枚の小葉に分岐しており、その後の進化と栽培化により、新たな色の品種が生まれ、花びらに斑点模様や花房が現れるようになったのではないかとしています。
バラの多様性が中国に2つのホットスポットを持つこと、そしてこの植物が、乾燥した北西部では小さな葉を持つ黄色い花を咲かせ、温暖で湿度の高い南西部では香りの良い白い花を咲かせるという、異なる気候に適応するように進化してきた可能性が示唆されました。
これらの結果から、バラの domestication の理解を深め、野生資源を活用した革新的な育種への応用が期待されます。

論文情報
Cheng, B., Zhao, K., Zhou, M. et al.
Phenotypic and genomic signatures across wild Rosaspecies open new horizons for modern rose breeding. Nat. Plants 11, 775–789 (2025).
https://doi.org/10.1038/s41477-025-01955-5