好中球が“第二の皮膚”? 傷口を守る驚きの新機能を発見
皮膚は体内の水分が過剰に失われるのを防ぎ、外部からの刺激や異物(細菌、ウイルス、アレルギー物質など)の侵入を防ぐ「バリア機能」を有しますが、このためには細胞の産生する細胞外マトリクス(ECM)が重要な役割を果たします。この論文は、皮膚に存在する、ECMを産生する特殊な好中球を発見し、その機能とメカニズムを解明した研究です。
研究チームは、皮膚に存在する好中球が、コラーゲンなどのECMタンパク質を豊富に産生することを発見しました。これらの好中球は、皮膚のバリア機能を強化し、外部からの異物や微生物の侵入を防ぐ役割を果たしています。
さらに、皮膚の損傷時には、これらの好中球が傷口の周囲にマトリックスのリング(matrix rings)を形成し、外部からの侵入を防ぐバリアとして機能することが明らかになりました。このリング形成には、TGFβシグナルが重要であり、TGFβシグナルを阻害すると、リング形成が阻害され、細菌感染が促進されました。
好中球除去マウスとTGFβシグナルを欠損させたマウスを作製し解析を行った結果、好中球が皮膚のコラーゲン構造、機械的特性、透過性などのバリア機能に重要な影響を与えていることが明らかになりました。
以上の結果から、自然免疫系は、微生物を殺すだけでなく、物理的なバリアを強化することで、生体を外部環境から守るという多様な戦略を進化させてきたことが示唆されました。この発見は、感染症や皮膚疾患の新たな治療法の開発につながる可能性があります。

論文情報
Matrix-producing neutrophils populate and shield the skin